
「採用するなら、これからはSNSをやった方がいい」
そんな話を聞く機会が増えました。
実際、TikTok、Instagram、YouTubeを活用して、社員の日常や現場の様子を発信する建設会社も珍しくなくなっています。
一方で、
「動画を何本投稿しても応募が来ない」
「再生回数は伸びたけれど採用にはつながらない」
「そもそも建設会社がSNSをやる意味があるのか?」
と疑問を感じている経営者もいるのではないでしょうか。
結論から言えば、SNSは職人採用において非常に有効なツールになり得ます。
ただし、
「SNSをやれば人が採れる」というほど単純ではありません。
むしろ、その役割を間違えてしまうと、動画制作に時間とお金を使い続けるだけになってしまう可能性があります。
では、職人採用においてSNSをどう考えればいいのでしょうか。
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SNSには、そもそも多くの人がいる
まず押さえておきたいのは、SNSそのものの利用規模です。
TikTokは2026年5月末時点で、日本国内の月間アクティブユーザーがTikTok Liteとの重複を除いて約4,950万人に達したと発表しています。さらに2025年の調査では、30代の34.1%、40代の29.1%が直近1年以内にTikTokを視聴しており、もはや「10代だけのSNS」とは言いにくい状況です。
Instagramも日本で幅広く利用されており、Metaの広告ツールを基にした2025年初頭の推計では、日本で約5,750万人への広告リーチが可能とされています。
YouTubeもショート動画と長尺動画の両方が利用されており、2025年の国内年間ランキングでも、コンテンツが長尺とショートを横断して支持される傾向が確認されています。
つまり、
「職人になり得る人たちがSNSにいない」のではありません。
問題は、その人たちに何を見せ、どう採用につなげるかです。
求人媒体とSNSは役割が違う
ここを理解することが非常に重要です。
求人媒体を見ている人の多くは、
「仕事を探している」
「転職先を探している」
という状態です。
一方、TikTokやInstagram、YouTubeを見ている人の多くは、仕事を探すためだけにアプリを開いているわけではありません。
暇な時間に動画を見る。
好きなジャンルの投稿を見る。
情報収集をする。
そんな中に、
「今の会社、給料上がらんな」
「もう少し休みが欲しいな」
「もっと評価してくれる会社ないかな」
という人がいる。
ここにSNS採用の大きな価値があります。
つまりSNSは、今すぐ転職したい人だけではなく、「まだ求人サイトを見ていない人」と接点を持てる媒体なのです。
SNS採用の最大の価値は「潜在層との接点」
例えば、ある電気工事士が現在の会社に大きな不満はなく働いているとします。
求人サイトを見るほど転職意欲はありません。
しかしTikTokを見ていると、別の電気工事会社の動画が流れてきた。
若い社員が楽しそうに働いている。
社長と社員の距離も近そう。
給料についても公開している。
資格取得を会社が支援している。
「この会社、なんか良さそうやな」
と思う。
その場ですぐ応募しなくても、会社名を覚えるかもしれません。
何本か動画を見る。
フォローする。
ホームページを見る。
そして半年後、現在の会社で何か不満が生まれたとき、
「そういえば、あの会社募集してなかったかな?」
となる。
これがSNS採用の強さです。
求人媒体が「今転職したい人」を取りに行く場所だとすれば、SNSは転職を考える前から接点をつくる場所と考えることができます。
建設業は動画との相性がいい
そして建設業には、SNSと相性の良い特徴があります。
現場があります。
職人がいます。
工具があります。
重機があります。
技術があります。
完成までの変化があります。
例えば、
職人の一日。
新人とベテランの違い。
職人あるある。
特殊工具の紹介。
施工前→施工後。
職人の給料。
資格について。
社長への質問。
若手職人へのインタビュー。
「この仕事の何が面白い?」
「夏の現場って実際どう?」
こうしたコンテンツをつくることができます。
企業側からすれば当たり前の光景でも、求職者からすると知らない世界です。
特に未経験者には、文章で、
「○○工事を行っています」
と説明するより、実際の作業動画を10秒見せた方が伝わることもあります。
TikTok・Instagram・YouTubeは使い分ける
3つのSNSをすべて別々に運用する必要はありませんが、それぞれの特徴を理解しておくと使いやすくなります。
TikTokは、まだ会社を知らない人との「最初の接点」をつくるのに向いています。フォロワーだけでなく、おすすめ経由でコンテンツが発見される可能性があるからです。実際、TikTok自身も、プラットフォームが単なる流行の場から日常的な情報発見の場へ広がっていると説明しています。
Instagramは、投稿、リール、プロフィールなどを通じて会社の雰囲気を蓄積して見せやすい媒体です。
YouTubeは、ショート動画で認知を取りながら、社員インタビュー、社長の考え、仕事内容紹介など、より詳しい情報を長尺動画で伝えられます。
つまり、
TikTokで知る→Instagramを見る→YouTubeで深く知る→ホームページ・求人を見る
という流れも考えられます。
もちろん実際の導線は人それぞれですが、重要なのはSNS単体で採用を完結させようとしないことです。
「バズれば採用成功」ではない
SNS採用で特に注意したいのが、再生回数です。
10万回再生。
100万回再生。
数字としては非常に魅力的です。
しかし、
再生回数=採用力
ではありません。
例えば大阪の足場職人を1人採用したい会社の動画が100万回再生されたとしても、視聴者の多くが県外だったり、建設業にまったく興味のない人だったりすれば、採用への効果は限定的です。
反対に再生回数が3,000回でも、
大阪在住。
20~30代。
建設経験者。
転職に少し興味がある。
という人たちに届いて、その中から1人採用できれば十分な成果です。
SNS採用で追うべきなのは、
「何回再生されたか」だけではなく、「誰に届き、最終的に何人採用できたか」
です。
面白い動画ばかりになっていないか
もう一つ起こりやすいのが、
「再生される動画をつくろう」
と考えすぎることです。
職人あるある。
ドッキリ。
社長いじり。
社員同士の掛け合い。
こうした動画は会社を知ってもらう入口として有効です。
しかし、それだけになってしまうと、
「面白い会社だな」
で終わります。
採用につなげるためには、
どんな仕事なのか。
給与はいくらなのか。
休日はどうなのか。
どんな人が働いているのか。
未経験者をどう育てるのか。
何ができれば昇給するのか。
会社がどこを目指しているのか。
こうした「働く判断材料になるコンテンツ」も必要です。
「認知を取る動画」と「応募したくなる動画」は、必ずしも同じではありません。
SNSだけで採用しようとしない
SNSで会社を知った人が興味を持った。
そこで会社名を検索する。
ところがホームページが10年前のまま。
採用ページがない。
求人情報を探しても出てこない。
応募方法も分からない。
これでは、せっかくSNSでつくった興味を逃してしまいます。
だからこそ、
SNS→ホームページ→求人情報→応募
までを一つの採用導線として考える必要があります。
SNSは採用活動のすべてではありません。
採用の「入口」を増やすものだと考えた方が分かりやすいでしょう。
すぐに応募が来なくても意味がないわけではない
SNS採用では、始めて1カ月で応募が来なかったから、
「効果がない」
と判断するのも早いかもしれません。
SNSには採用ブランディングという役割もあるからです。
動画を何度も見る。
会社名を覚える。
社員の顔を覚える。
社長の考え方を知る。
仕事内容を知る。
こうした接触が積み重なって、
「あの会社、前からよく見るな」
という状態になる。
そして転職を考えたタイミングで候補に入る。
SNSは、今すぐ応募を取る広告であると同時に、将来の応募者との関係をつくるメディアでもあります。
SNSは「採用の魔法」ではない。しかし武器にはなる
では、TikTok・Instagram・YouTubeは職人採用に本当に効果があるのか。
答えは、
「使い方次第で、大きな武器になる」
です。
求人媒体だけでは接触しにくい潜在層へ会社を知ってもらう。
写真や文章では伝わりにくい現場の雰囲気を見せる。
社員の人柄を伝える。
社長の考えを伝える。
職人という仕事の格好良さを伝える。
そして転職を考えたときに、
「あの会社で働いてみたい」
と思い出してもらう。
これこそ、SNSを職人採用に使う大きな意味ではないでしょうか。
大切なのは、バズることではありません。
フォロワーを何万人集めることでもありません。
「自社が採用したい人に、自社を知ってもらい、
興味を持ってもらい、応募につなげること」。
求人を出して転職者を待つだけの採用から、SNSを通じて転職前の人材とも接点をつくる採用へ。
人手不足が続く建設業界だからこそ、TikTok・Instagram・YouTubeは単なる広報ツールではなく、将来の職人候補と出会うための採用チャネルの一つとして考える時代になっているのではないでしょうか。
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